本の画像「君が世界を見捨てても 世界が君を見捨てない」

酔っていないと頭が狂ってしまいそうだから、朝も昼も夜も酒を飲む。

アルコール依存症。

ぼくはそのひとりでした。

 

これからお話しするのは、こんな物語です。

ある日、3年以上連絡をしていなかった大学時代の旧友「エスパー」サトシから、Facebookでとつぜん1通のメッセージが届きます。
そこにはたったひとこと「本。送ったから」とありました。
彼のくれた1冊の本を読み終わったとき、アルコール依存症だったぼくは...

この記事は、かつてのじぶんと同じ、真っ暗な出口のない暗闇を歩いている仲間たちに向けて書きます。

 

目次

■「もう死ぬのだ」と思った。それでもやめられなかった。
 ・はじめは、ただ楽になりたいだけだった
 ・アルコールに慣れて、酔えなくなった。浴びるように飲んだ
 ・カラダが壊れていった
 ・ついに、動けなくなった
 ・「死にたくない」怖くって情けなくって涙が止まらなかった
 ・カラダの大切さに気がついた。それでも...
 ・人生を変えるFacebook Message

■エスパーな旧友が送ってくれた1冊の本が、ぼくを救った
 ・3年ぶりのエスパー
 ・「本。送っといたから」
 ・『君が世界を見捨てても 世界が君を見捨てない』
 ・絶望を乗り越えた人の姿が、希望に見えた

■あなたはいま、どんな顔?
 ・あとがき

4402文字 読了5分

 

■「もう死ぬのだ」と思った。それでもやめられなかった。

3年前、ぼくは毎日お酒を飲んでいました。

 

はじめは、ただ楽になりたいだけだった

いつもどんなときでも、ずーっと頭がモヤモヤしていて、胸がそわそわしていて、落ち着くことができずに、お酒を飲んで気を紛らわせていました。

はじめのうちは、気分が良くなって、フワフワした心地よい状態が続いて、
「あ。これはいいなあ」と楽観的に考えていました。

しかし、何日もお酒を飲んでいたら、体がアルコールに慣れてきてしまって、酔えなくなってきたんです。

 

アルコールに慣れて、酔えなくなった。浴びるように飲んだ

それでは困るから、一度に飲む量を増やしました。

体がずっと酔っているので、つねに気持ちがいいかと言うと、そうではなく、むしろ気分が悪い日が何日も続き、少しずつ体がお酒を拒否するようになりました。

ですが、やめるわけにはいきません。

飲まないと、お酒で気持ち悪いのより、もっと嫌な気分で満たされるのです。

だから、飲み続けました。

 

カラダが壊れていった

何週間も毎日毎日、四六時中お酒を飲んでいると、体の悲鳴が鳴り止みません。

体力が落ちて、風邪をひいてこじらせたり、下痢や嘔吐をしたり、立ち眩んで倒れたり、足に力が入らず、トイレに行くのにも苦労するようになります。

そんな泥沼の気分が続いても、心の苦しさに比べたら、マシだって思ってしまっていました。

それが、間違いでした。

いま思えば、健康な体あってこその、心です。

でも、そんなこと考えている余裕がありませんでした。もう戻るタイミングを失ってしまっていたし、なにより、「お酒をやめたからといって、もとの心の苦しい日々に戻るだけ」だとわかっていたので、「お酒をやめるという選択肢」がありませんでした。

 

ついに、動けなくなった

ある日、パタっと体が動かなくなりました。

いくら動かそうとしても、ちっとも言うことを聞いてくれません。

そのとき、「ああ、このまま、アルコールでいっぱいのこのボロボロのゴミのような体のまま、心も救われることもなく、だれにも看取られず死んでいくんだな」と確信しました。

 

「死にたくない」怖くって情けなくって涙が止まらなかった

とつぜん、せきをきったように涙があふれてきて、声を出して、むせびながら泣きました。

動かない体を小刻みに震わせながら、何時間も泣きました。

からだの水分がなくなって、のどが渇いて、咳が出てくると、ほんとうにこのまま死んでしまうように思えて、怖くなりました。

日が暮れてお腹がすいて、トイレも我慢の限界が近づいていました。そこでやっと、体が僕の意思に応えてくれました。

 

カラダの大切さに気がついた。それでも...

不思議なもので、あれほど頼っていたお酒を
「もうこりごりだ」
と思いはじめました。

順番が変わったんです。

それまでぼくの優先順位の第1位は、
「気分が良くなるなら体がどうなったってかまわない」
という気持ちでした。

この経験の後からは、
「体が壊れて死にそうになるくらいなら、なんとかお酒を絶って、自力で心を奮いたたせて生きたい」
と考えるようになりました。

そうはいっても、それまでずっとお酒に頼っていたので、どうすれば自力で気持ちを落ち着かせることができるのか、わかりません。結局お酒しかないのかなあと思い、からだの調子が戻った頃に、またお酒を飲み始めました。

 

人生を変えるFacebook Message

このときは本当に呆れました。自分に。
「こんなにツライ経験をしたのに、まだお酒に頼るなんて」
そう思いました。バカだなあって。

もうきっと、お日さまの下で、笑って過ごすなんてことは、できないんだろうって、思いました。

そんなときに、3年以上連絡をとっていなかった友人から、facebookを通してメッセージが送られてきました。

これが、ぼくの人生を変える、大切なきっかけになりました。

 

■エスパーな旧友が送ってくれた1冊の本が、ぼくを救った

これからは、ボロボロになった体に、さらにお酒を注ぎ始めたぼくを救ってくれた友人と、彼が送ってくれた本のお話をします。

 

3年ぶりのエスパー

彼は「サトシ」といいます。

大学で毎日つるんでいた頃から、妙に感の鋭い男で、ぼくが完璧に隠しているつもりの鬱な気分を、なぜだかいつも言い当てていました。けっこう不気味でした。

それが、「何か嫌なことあった?」っていうザックリとした透視なら、「顔に出てたかな?」くらいに思うのですが、

彼は「またあのジャイアンにうっとうしいこと言われたんだろ」と、ピンポイントで当ててきます。

未だかつて外したことがないので、スマホに盗聴器やスパムを仕込んでいるのではないかと疑うほどです。それは絶対にないんですけど。

そんな彼が3年ぶりにfacebookからメッセージを送ってきたときは、懐かしいやら恥ずかしいやら、申し訳ないやら情けないやら、複雑な気持ちでした。

SNSが唯一の外の世界との交流の場だったので、たまに人の投稿にイイねをつけたり、コメントをしていたんです。それを見て、何かを察したのだと思います。

とはいうものの、自分の近況なんか、いっさい投稿していなかったので、その時の状況を、彼がわかるはずもないのですが......

 

「本。送っといたから」

「久しぶり」なんていう挨拶もなく、たったひとこと、
「おっす。さっき、本、送っといたから」
それだけのメッセージが送られてきました。

懐かしい友人のメッセージに、とまどい、自分の今の姿を見せられないことにうちひしがれました。

しかしそれよりも、
「本?」
という疑問が頭にこびりついて、ポストが気になって仕方がありませんでした。

3日後の昼過ぎ。
郵便屋さんのバイクの音と、
「キィ〜、パタン」
というポストの音で目覚め、飛び起きて封筒を取ってきて、少し間をおいて封を切りました。

 

『君が世界を見捨てても 世界が君を見捨てない』

本の画像「君が世界を見捨てても 世界が君を見捨てない」

さとし(本をくれた友人)の声と、この言葉が重なって聞こえて、
今どこで何をしているのかわからないけれど、それはお互いにそうなのだけれど、
なんだかずっと、彼は彼でいて、ぼくが勝手に世界に絶望していたときも、彼はいつもどこかにいたんだなあ。

そう思いました。

声の出ない、静かな涙が流れて、胸の奥でせき止められていた濁った水が、少しずつ氷を溶かすように、ゆっくりと体と心から溢れて消えていきました。

 

絶望を乗り越えた人の姿が、希望に見えた

翌日のお昼まで、トイレと風呂と食事以外は布団を出ずに。この本を読み続けました。

ぼくとはまったく別の人生を、別の傷を受け、苦しみに触れ続けても、生きた女性の言葉は、希望そのものでした。

安っぽい言い方ですが、
「なんてちっぽけな理由で、自分のからだを傷つけてきてしまったんだろう」
そう思いました。

瀬戸しおりさん。
彼女の生きた道に比べれば、ぼくの通った道のイバラは微々たるトゲに見えたんです。

人の痛みは十人十色。人の数だけ痛みがあります。

だから、誰かと自分の痛みを比べることに、意味はありません。

ですが、想像もできないくらいに苦しいであろう悲しいであろう痛みに耐えて、歩んでいる人の姿を見て、自分の痛みが軽く感じられるのならば、そうやって自分を奮いたたせて歩き続けられるのなら、いいんじゃないかなって、思うんです。

 

ぼくは、もういちど、
「生きよう」
そう決めました。

 

■あなたはいま、どんな顔?

この記事を読んだあなたは、いま、どんな顔をしていますか。

うつむいて眉をひそめていませんか
口を結んで下唇を噛んでいませんか
昔のことだと思い出して宙を見つめていませんか
涙を流していませんか

 

ぼくたちは、この世を恨むほどにツラいことに出くわしてしまって、無念にも破れてしまい、大きな傷を残してしまったとき、
「こんな世の中なんて」
と、見限ってしまいたくなります。

そんなときは、さっきの本の一文を思い出してください。

そして、ぼくのエスパーな友人のことも。

あなたにも、あなたが何を誰をどれだけ見捨てても、いつもどこかで、あなたを気にしている人がいて、そうでなくても、あなたが生まれたときに、たしかにその人がいたんだってことを、覚えておいてください。
そしてその人は、これから出会うのかもしれません。

『君が世界を見捨てても 世界が君を見捨てない』

 

あとがき

ぼくは今、毎日を笑って生きています。

あのころの真っ暗な人生が、本当にあったのかって、不思議におもうくらいに。

暗く、終わりの見えないトンネルを、出口があるのかもわからずにさまよって、疲れて座り込んで、ずっと泣いているあなたに、この物語が毒になっていないか、心配です。

どうか今は、ゆっくりと休んでください。

お酒は、少しずつ減らしていってみてください。

急にやめるとリバウンドしてしまうこともあるので、ゆっくりゆっくり、自分のペースで減らしてください。

こころと同じで、からだもいちど壊れてしまうと、元に戻すのがとっても大変です。

こころは他人に傷つけられますが、自分の健康は自分で管理することができます。
自分で守ることができます。

 

どうか、どうかご自愛ください。

ちょっとだけ、いたわってあげてください。

 

なごやかな日々がおくれますように、お祈りしています。